Home 家づくりのまなびば防災 17:災害時の交通インフラの確保

17:災害時の交通インフラの確保

 

今回は、大地震などの災害が起こってしまった時の鉄道や道路などの「交通インフラ」について学んでみましょう。東日本大震災の時、都市部では帰宅困難者が大量に発生し大混乱になった事が思い出されます。鉄道・道路の耐震対策や災害時の規制方法等を解説していきます。

 

1:鉄 道

(1)過去の地震における鉄道の被害

大地震が発生すると、列車の脱線や鉄道施設の倒壊などにより、鉄道に大きな被害が発生します。阪神淡路大震災では16本の脱線、高架橋や駅舎などにも多大な被害があり、山陽新幹線で8か所、在来線で24か所の落橋がありました。東日本大震災や熊本地震でも、多くの車両の脱線、高架橋の亀裂や軌道の損傷、防音壁が落下するなどの被害がありました。

 

(2)鉄道の震災対策

●列車の緊急停止システム

地震発生時に安全を確保するためには、列車を早く減速・停止させる事が重要で、新幹線では「新幹線早期地震検知システム」を搭載しています。地震時の初期微動(P波)を検知し、地震の規模や震央を算出して主要動(S波)が到着する前に緊急ブレーキを作動させるシステムです。在来線においても一定規模以上の地震発生を推測した場合や、沿線の地震計が一定の規制値以上の地震を検知した場合、運転士に緊急停止情報を発信することになっています。

●鉄道施設の耐震化

阪神淡路大震災を受けて国土交通省は、鉄道構造物の耐震補強の緊急処置の提言をしました。これを受けて鉄道各社は、高架橋の耐震補強や脱線防止ガードなどの設置を行い、阪神淡路大震災クラスの地震でも耐えうる施設となるよう対策を行っています。

 

(3)鉄道に乗っている時に地震にあったら

列車に乗っていて地震にあった場合は、あわててドアを開けて線路に飛び降りると二次被害を招く恐れがあり危険なので、停車後は乗務員のアナウンスに従い避難しましょう。また、被害が甚大な場合は、乗客同士で助け合うといった行動も必要になってきます。とにかく慌てず落ち着いて行動しましょう。

 

2:道 路

(1)大規模災害時の緊急輸送路の確保と交通規制

●緊急輸送路の確保(東京都の場合)

震災時には、道路、鉄道、河川、港湾、空港などを活用した緊急輸送ネットワークを確保するとともに、民間事業者との協定により車両や船舶などを調達することとしています。震災対策条例により、都民に「車両による避難の禁止」「交通規制の遵守」を義務づけています。

 

●震災後の交通規制(東京都の場合)

大震災(震度6以上)が発生した場合、以下のような交通規制が段階的におこなわれます。

・第一次交通規制(発生直後)

人命救助、消火活動に従事する緊急自動車等を円滑に通すための交通規制。国道・都道・高速道路の7路線が「緊急自動車専用路」となり、一般車両の通行が禁止されます。尚、震度5強の地震でも混乱を避けるため規制が掛かる場合があります。

・第二次交通規制

復旧・復興の為の災害応急対策を円滑に行うための交通規制。第一次交通規制の緊急自動車専用路がこの段階で「緊急交通路」となります。さらに、35路線のうち必要な路線が緊急交通路に指定されます。

防災士教本より引用

 

●地震発生時に運転者がとるべき措置

地震発生時には、家庭との連絡・避難などには、車両を使用しないようにしましょう。やむを得ず車両を道路上に置いて避難するときは、次の原則を守ってください。

 

<運転者の避難4大原則>

  1. 交差点を避け、道路の左側に寄せて停車する。
  2. エンジンを止めて、エンジンキーは付けたままにする。
  3. 窓を閉め、ドアロックはしない。
  4. 貴重品を車内に残さない。

 

また、放置車両対策も強化されており、

  1. 緊急車両の妨げとなる車両運転者等に対して移動命令を出す。
  2. 運転手不在の場合は、車両移動(ホイールローダー等による車両移動)をする。

ことがあります。
その際、やむを得ない限度での破損を容認し、損失補償規定を置くとされています。

 

(2)帰宅困難者対策

●帰宅困難者

住まいが遠方で、災害時に公共交通機関が停止した場合、帰宅が困難となる帰宅困難者は、大都市圏で多数発生し、首都圏の1都4県で640万人~800万人発生すると予想されています。膨大な外出者が一斉に帰宅行動をとると、道路は人であふれ混乱し、応急活動の妨げとなり二次災害の危険性が高まります。

 

●帰宅支援

徒歩帰宅者に対しては、沿道で情報、水、トイレ、休憩場所を提供する必要がありあります。このため自治体では、コンビニやガソリンスタンドなどを災害時帰宅支援ステーションとする協定を事業者と締結しています。

帰宅ルートや災害時帰宅支援ステーション等を表示した帰宅支援マップが自治体で作成されています。インターネットで提供されていることも多く、ラジオからの情報に加え、パソコンやスマートフォンからも収集可能です。

 

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東日本大震災の時、ニュースの映像で大勢の方が車道にも歩道にもあふれて歩いている映像が流れていました。

首都圏の交通網は脆弱で、遮断されると大混乱になります。仕事や学校に出かける際は、是非帰宅困難になった時の帰宅ルートを確認しておくことが大切です。いざという時スマートフォンは使えなくなりますので事前に確認しておきましょう。

また、いざという時の情報収集には携帯ラジオが便利です。出かける時は、忘れずに!

 

 

次回のテーマは、
「企業・団体の事業継続」です。
災害時に企業が果たす役割、重要業務の継続などを解説していきます。

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