家づくりのまなびば
川崎市で生活しているKさんの実話です。
2019年10月に発生した台風19号で川崎市多摩区において、実際に水害にあったお話をします。
建物は木造3階建で、1階が1.5mほど浸水し、家具の大部分は水没してしまいました。
下水の逆流が起おり、便器から水が噴き出す異常な状態が発生し、衛生上もとても良くない状態になりました。
私たち工務店など企業が家具などを捨てるなると相当な費用が掛かります。そこで家具などの廃棄は、市区町村が運営する指定廃棄場所を利用し、指定廃棄場所への持ち込み(無料)で廃棄してもらう事としました。家屋の復旧工事は全体で200万円ほどかかりましたが、川崎市から30万の助成金、残りの大部分は損害保険で補われたそうです。一生活再建に大きく影響しました。
所有している建物の火災保険の補償内容を確認しておく事は、大変重要となります。
また、大規模な災害が発生した場合、各地域において災害救助法等が適応され、様々な支援制度が行われます。行政機関からの情報をしっかり取得するようにしましょう。
建物に作用する力は鉛直(重力)方向の力と、水平方向の力に大きく分けられます。
建物の自重・人や家具などの荷重・雪の重量などは重力方向の力で、基礎や柱・梁が支えています。
一方、風や地震の力は主に水平方向に作用し、この力を支えるものが「耐力壁」となります。
■必要な耐力壁
耐力壁の量は、地震力の場合は建物の重量、風力の場合は建物の見付面積によって決まってきます。
例えば同じ速さで動いている軽自動車と大型トラックを止めようとした場合は、重たい大型トラックを止める方が大きな力が必要です。また、傘を開いて風下に立った場合と閉じた場合では、開いた場合のほうかより大きな力がかかることが想像できます。
傘の面積に相当する建物の見付面積は、プランが決まれば簡単な計算で算出できますが、建物の重量は、プランや屋根形状、屋根や内外壁に使う材料など多くの要素によって決まるため簡単には計算できません。そのため前回で説明した簡易な壁量計算で計算できるように建築基準法で規定されていますが、総2階ではないプランや、太陽光パネルの載った屋根などは規定にありません。また近年建物の高断熱化に伴い、ペアガラスや断熱材の重量が増えている傾向にありますが、これも考慮されないなどの問題点が指摘されています。
■耐力壁の種類
次に耐力壁の種類ですが大きく分けて3つの形式があります。
一つは柱梁間に斜めに木材や、丸鋼(鉄筋)を設けたもので筋交・鋼製ブレースなどです。
もう一つは柱梁間に構造用合板や構造用パネルを釘打ちした面材耐力壁です。
最近は面材耐力壁を採用する建物が多くなっています。これは断熱・気密性に有利なためです。最近では金物や集成材を使ったラーメン構造(柱と梁を溶接などで一体化した構造)とした耐力壁などが開発され、狭小間口や、一階に駐車場のある建物、高層木造建築などに採用されています。どの耐力壁が強いか弱いかではなく、どれくらいの強さを持たせるかが重要となり、使用する材料の大きさや留め付けている釘の種類や間隔、金物や集成材の強さによって耐力壁の強さは変わります。
耐力壁の量は「耐力壁の強さ×耐力壁の総長さ」で計算されます。また耐力壁は建物にねじれや変形が起きないようにバランスよく配置をしなければなりません。このバランスを数値化したものを偏心率と言います。さらに建物に作用する水平力は屋根や床を伝わって耐力壁へと流れていきますので、屋根や床の強さも重要となります。
それはまた、別の記事で詳しく説明したいと思います。
今回は、賃貸住宅に関してのお話となります。
賃貸住宅の「ニオイ」について、どのくらいの方がご存知でしょうか?
例えば、賃貸で借りているお部屋に、
誰が嗅いでも生活に支障が出るような「異臭」をつけてしまった場合は当然、
借主の責任と負担で除去しなくてはなりませんが、
実は、いわゆる生活の一部として「楽しむ香り(ニオイ)」についても、
借主の責任と負担で除去する事が求められるようになってきてます。
賃貸住宅のニオイを巡る一連の流れでまず起点となるのが「タバコのニオイ」で、
主に退去時の原状回復の際の負担割合がトラブルの元になっております。
かつては喫煙も通常の生活の一部とされ、ニオイやヤニの付着、変色について、除去、修繕を借主に負担していただく事が比較的難しい事案でした。当然程度の問題もありますが、「ニオイが取れない」「ヤニの付着が酷く経年以上に変色してしまった」等、状態が特に酷い場合は借主に請求するケースはもありました。その大体がトラブルとなり、裁判になる事も少なくなかったようです。
そうした幾つかの裁判の中で「一般的なクリーニングで除去、修繕できない場合は、通常の使用による汚損を超える」という判例が積み重なり、国土交通省が公表している「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」にもそのように記載されるようになりました。
要は、簡単に除去、修繕できないタバコのニオイ、ヤニ汚れ、変色については、
借主の負担で除去、修繕する必要があるという事を国が示したのです。
受動喫煙防止の健康増進法改正の後押しもあり、今ではかなり定着し、気を付ける喫煙者も多くなりました。
そして最近では、「一般的なクリーニングで除去、修繕できない場合は、通常の使用による汚損を超える」という部分について、タバコに限らず、お香、アロマオイル、市販の芳香剤等、他のニオイについても問題視されるようになってきました。
自分が望んでいない香りがする時点でその方にとっては異臭ということなのです。
感覚的にですが、古いなりの部屋のニオイ以上に問題にされる事が多い気がします。
前の入居者がつけたニオイが原因で次の入居者が決まらない可能性がでる上に、それが通常のやり方では落ちないとなれば、当然の流れでしょう。
定着しやすく、簡単に除去できない上に強い香りが増えたというのも、大きな原因の1つになっているかもしれません。
定着してしまったニオイの除去については、契約特約にタバコと合わせて折り込まれている事も多くなりました。そもそも、これらの使用を禁止しているお部屋も多くはないですが出てきました。
■代表的な香りを楽しむ物について、いくつか具体的なものをご紹介します
まずは、お香について。火をつけて煙を出す時点で、タバコに近い扱いとなります。頻繁に長期間使い続ければ、ヤニも付着し、香りも壁紙や床天井に染み付き簡単には除去できなくなります。
次に、アロマオイル等の揮発させて香りを楽しむ物についても、頻繁に長期間使い続けると香りが壁紙や床天井に染み付き簡単には除去できなくなります。
市販の芳香剤についても、注意が必要で、特に香りを定着させるようなタイプのものは、文字通り室内に定着させるので、年数が積み重なると簡単には除去できなくなります。
体や衣服につける香水を日常的に使っている場合も、香りが定着する事があります。
それぞれ、定着させないようにするには、
連続使用を避ける事と適度な換気が必要となります。
ここまで、賃貸の原状回復を見据えた上での香りの考え方について書いてきましたが、一概にダメという事ではありません。原状回復の際に負担が発生する可能性を理解した上で使用されるのであれば、禁止されていない限り、ご自身の思うように香りを楽しんで頂けます。
また、持ち家の場合、退去時の負担については気にする必要はありませんが、好みが変わったとか、他の家族には合わなかった際などは、定着した香りの除去を考える必要が出てくるかもしれません。
香りなどの嗜好品を楽しむ際には、このようなこともあるんだなぁと思い出して頂ければ幸いです。
2022年、コロナウイルス感染症の関係で、給湯器不足が話題になったのは、記憶に新しい出来事です。2023年になって商品不足は解消され、交換も容易に出来るようになりました。また、ご家庭でのエネルギー消費のうち、約3分の1が「給湯」です。
給湯器についていろいろなことを知ることは、地球の温暖化防止にも貢献できるのです。
給湯器には、ガス給湯器、エネファーム、エコキュートなど、電気及びガスを使用する商品が多く発売されています。それぞれの特徴について解説していきます。
・今回は今回は、ガス給湯器について解説します。
給湯器のなかで、一番多く普及しているのがガス給湯器です。コストも安く、設置工事が容易に出来るのが人気の理由です。
最近は、省エネタイプの給湯器も各メーカーより発売されています。
省エネガス給湯器の代表とされるECOジョーズは、従来そのまま排出されている排気熱を再利用することにより、従来の給湯器より熱効率は約20%の向上を達成しています。
また、環境性では従来型の給湯器よりCO2排出量を約13%の削減し、家計にも地球にも優しい給湯器なのです。
給湯器を選ぶときの注意点として、各家庭でのお湯の使用量を確認し、それに見合う能力の給湯器を選ぶことです。大まかに16号から24号まであります。家族構成やお風呂のお湯張りや台所の利用時間のタイミングでの同時使用の可能性がある有る無しなどを考慮してご判断下さい。良く聞く話ですが、浴槽のお湯張りや追い炊きをしている時、シャワーが使えない。なんていう事があるようです。詳しくは、メーカーや近所の工務店等に相談してみてください。
地球温暖化によって世界的に暖冬傾向とは言われていますが、
まだまだ日本の冬は厳しい寒いです。寒い季節の必須アイテムと言えば、暖房器具ですよね!
そこで今回は、床暖房について解説したいと思います。
床暖房は、熱源が床材の下に敷きこまれていて、床材を温める事により、床材全体からの
輻射熱と伝導、空気の対流によって部屋全体を均一にあたため、頭寒足熱の室内空間が実現できます。
ストーブなどの局所的に温める暖房器具とは違い、足もとから全身が温まる為、冷え性の方には特におすすめです。ガスや石油を熱源とした暖房は、室内で燃料を燃やしていますので、空気を汚染し、水蒸気を発生させ結露が発生したり、火災の原因にもなる為、お子様や、高齢者の方は注意が必要になります。
ストーブやこたつなどで部屋のスペースが狭くならないのもうれしいですよね!
1つ注意が必要なのが、使用する床材です。
含水率の高い無垢材のフローリングやビニール系の床材を使用すると、乾燥して収縮したり、表面が変色したりします。
床暖房対応の製品を選択しましょう。
床暖房の対応した、無垢のフローリングや畳、カーペット等々、様々な製品がありますので、施工会社に相談してください。
次回は、床暖房の種類(ガス温水式・電気式)について解説します。
令和4年6月に公布された「脱炭素社会の実現に資するための建築物のエネルギー消費性能の向上関する法律等の一部を改正する法律」に基づき「4号特例」制度が大きく見直しをされ、また住宅の省エネルギー基準適合義務化や太陽光発電の普及などにより、建物重量の増加に伴う地震等の影響に配慮するため、壁量計算や柱の太さに関する基準が改正されます。
この改正により、以前から問題のあった建築確認時の構造審査省略が見直されます。
また壁量計算や柱の太さに関する計算は、以前からあった重い屋根、軽い屋根の違いのみでの計算から、建物の屋根や壁の仕様の違いによる建物重量に合わせた計算方法に変更され、基準壁量も以前の1.2倍~1.5倍ほどに強化されます。
2025年4月施行予定のため、昨年から国土交通省主催の説明会が全国で開催され、多くの工務店が対応済または対応準備中だと思います。(長期優良住宅を標準としている工務店や、許容応力度計算を採用している場合はあまり変わらないと思いますが・・・)
「4号特例」とは、木造2階建て以下で、延べ床面積500㎡以下の建物を「4号建物」といい、建築士が設計した場合は建築確認申請時に構造に関する審査が省略される制度で、壁量計算書や伏図などの構造関係書類の提出も不要でした。
そのため計算をしない、構造伏図も作成しないなどにより、耐震性が不足するなど数多くの問題が指摘されていました。
見直しの具体的なポイントは、「4号建物」がなくなり 2階建て以上または延べ床面積200㎡以上の建物は新2号建物に区別され、
- すべての地域で建築確認申請が必要(以前は、都市計画区域外では確認申請が不要)
- 確認申請の際に、構造関係図書の提出が義務化される。
壁量計算・四分割計算書・N値計算書及び仕様規定適合表の提出、基礎伏図、各階床伏図、小屋伏図などの構造図の提出が義務化予定でしたが、仕様表や構造詳細図の提出により構造伏図等の提出は省略される予定となり、完全に問題が解決されなくなってしまいました。残念です。
4号特例縮小、それでも懸念される2つの問題の記事を読んでください。https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/00138/111601410/
- 必要壁量(耐力壁)の計算方法や柱の太さに関する基準の変更。
最近の建物は、屋根に太陽光パネルが採用されたり、断熱が強化されたりすることにより建物重量も増加しています。また屋根や、外壁の仕様の組み合わせも様々で、[重い屋根、軽い屋根]の違いのみだけで必要壁量を算出する方法では実情に合わなくなっています。また開放的なプランが多くなり1階の壁が少なくなる傾向にもあります。
柱の太さも、階高や壁の仕様に関係なく決められていました。改正後は太陽光パネル有・無の選択や、1,2階の床面積比率から屋根・壁の仕様を選択する方法、表計算ソフトから計算する方法が整備され、より実情に合った必要壁量や柱の太さが算定できるようになりました。ちなみに、1・2階比率100/100(いわゆる総2階建て)で瓦屋根、外壁がモルタル塗り仕様の場合の必要壁量は、改正前の基準から1階で1.48倍、2階で1.38倍になります。
- 完了検査において、構造関係規定が検査対象となる。
改正後は、完了検査に合格し検査済証が交付を受けるまで建物が使用できません。また完了検査時に、構造部分の施工写真や品質管理記録などによる施工状況報告や、材料の品質証明書(鉄筋、コンクリート)の提出が必要となります。
「4号特例の見直し」によって、今まで見過ごされていた構造関係の問題点はかなり改善されると思いますが、次回以降で説明する床組等のチェックや、基礎のチェック等は「構造安全性の配慮事項として設計上の配慮を行うことが望ましい」で済まされてしまっています。
先程の記事も含めて、信頼できる建築士や工務店に相談し、ご自身で構造の図面や数値等を確認する事をお勧めします。