昨今、大規模災害が発生時の行政機関の初期対応の限界が指摘されています。そこで期待されているのが、地域住民自身の防災力の強化です。「自助・共助に基づく地域防災力」を高める事が大きな課題になっています。
そこで今回は、地域防災力を高めるのに重要な、自主防災活動と地域防災計画を学んでみましょう。
1:自主防災活動
災害の規模が大きければ大きいほど、救援活動を実施する行政機関も被災します。道路破損・渋滞や情報伝達の支障が起こり、組織的な救援活動の本格化には時間を要します。しかも行政機関の職員も被災している可能性が高く、行政のマンパワーは低下して、初動対応は困難を極めます。
こうしたことから、地域防災を担う主体は住民自身でありその中心となる形態が自主防災組織になります。
(1)自主防災組織とは
自主防災組織は、「自分たちの地域は自分たちで守る」という自覚、連帯感に基づき、住民同士が話し合い、いざという時に避難の呼びかけ・誘導・救出・救助・初期消火・避難所の運営、また災害による被害を予防し、軽減するために自主的に結成する組織です。
防災組織は、地域において「共助」の中核をなす組織であるため、自治会等の地域で生活環境を共有している住民で結成されるのが望ましいとされています。
(2)自主防災組織の組織づくり
自主防災組織は、普段から防災計画立案、災害対応手順の確認、役割分担、資機材の確認などを進めておくことが大切です。また、防災訓練や住人への防災啓発活動も実施します。「平常時の活動」と「災害時の活動」とを、効果的に実施するために役割分担ごとに「班」を編成し、普段から訓練を行っておくことが重要になります。
2:地区防災計画
2013年の災害対策基本法の改正に伴い、新しく「地域防災計画」制度がスタートしました。住民同士が話し合い、作成するものであり、地域の防災力の向上に画期的な手法です。
(1)地域の防災対策・3つの要点
①災害履歴・災害環境とリスクの確認
自分たちが住んでいるまちは、過去にどんな災害が起きているか(災害履歴)、地形や立地条件、住宅やまちの形状を確認して(災害環境)、これからどのような災害がどのような規模で起こりうるのか(災害リスク)を知ることが重要になります。防災対策は、ここから始まります。
②防災計画の立案・役割分担
災害リスクの認識を共有したら、災害に対しどのように対応するのか計画・マニュアルを作成し、役割分担を決めます。
決める内容は、避難や避難誘導、初期消火・安否確認、避難所の開設等々、自主防災組織の班編成とその役割などです。
③訓練の実施
計画が定まったら、その計画に基づき訓練を実施します。
記録係を設けて、計画通りにできるのかどうかを確認します。また一人でも多くの住人に参加してもらう事が重要になります。
(2)地区防災計画に盛込む防災活動
地区防災計画には、下記の表2のような項目を盛込むことが重要になります。
最初から完成度の高いものを作るのでなく、自らの命と街を守るために話し合い、意識を共有することが重要になります。
(3)都市部の特性に対応した計画づくり
①木造密集地域
大地震が発生した場合、木造密集地域では、建物の倒壊や同時多発的 な火災により大規模な市街地火災が発生するおそれがあります。阪神淡路大震災では、地震に伴い同時多発的に発生した火災で約66haを焼失しました。都市の弱点である木造地域密集対策や地域防災計画などの自治体の取組や対応を参照して立案しましょう。
②マンションの防災
高層マンションは、大規模災害に直面すると様々な問題が生じ易いです。
一度停電が発生すると、断水したり、エレベーターが使用不可になります。また、水栓トイレも使用できなくなり、高層階に住む住人にとっては死活問題になります。多くの世帯が居住するマンションでは、建物の管理組合とは別に自主防災組織を作り、マンションの地区防災計画を作成することが求められています。
近年、地球温暖化の影響なのか、世界的規模で災害が多く発生しています。その中で、自主防災活動と地区防災計画は、地域住民自身が、自らの命・家族・街を守るための重要な活動です。全国1,741市町村のうち1,688市町村で設置されていますので、皆様のお住まいの地域でも自主防災組織が結成されていると思います。
日頃から防災意識を高めると共に、いざという時の為にも是非自主防災組織に参加してみてください。
私たち匠の会は、防災協定を結んでいます。これは、被災した会員社の機能をいち早く復旧させ、地域の皆様のお役に立てるように、資材や人員を提供することを目的としています。
地域密着の工務店としていざという時、「自助・共助」のお手伝いができればと思い、これからも地域の防災活動に協力していきます。
次回のテーマは、「みんなで行う避難所の設置と運営協力」です。災害時によく耳にする避難所ですが、どのように設置され、運営されているのか等、わからない事が多くあると思います。そのあたりを解説していきますので、次回も是非ご覧ください。