今回は前回に続き、電力・ガス(都市ガス・LPガス)・上下水道・通信などの「ライフライン」について学んでみましょう。どれをとっても、日常生活に無くてはならない大切なインフラ設備です。2回目の今回は、「上下水道・通信」についてです。平時にはどのような準備と対策が必要なのか、また災害時には、どのような事に注意した方が良いのかを解説していきます。
1、上水道
1:災害時に上水道はどのような状態なのか?
自然災害のうち、最も上水道施設への影響が大きいのが大規模地震です。
配水管に損傷が発生すると、それより下流部には水の供給はできません。その回復には、破損部の取り換えが必要になり、その間断水が続く事になります。配水管は、道路などに埋設されており破損個所の発見・修理には、道路を掘削しなければならない為、多大な時間か掛かります。震災後3日くらいから開始され、完了まで1か月程度掛かります。
2:災害に備えた自らの準備
大災害が起きたときには、発生後、最悪でも1ヶ月程度断水を想定し、外部からの支援がなくても自らの飲料水を確保するようにしましょう。
①最低3日間分の飲料水の確保
目安は、1人1日3ℓ 3日分で9ℓ(2ℓペットボトル約5本分)
水道水を汲み置きする場合は、蓋の出来る容器に口一杯に水を入れ、直射日光を避けて保存します。水道水は塩素により3~7日は保存できます。
② 水栓トイレ用の水・消火用の水
前日使用した風呂水を浴槽に残しておきましょう。
災害時や火災などの際、利用することができます。
2、下水道
大震災では、避難所の水洗トイレが断水と下水道の破壊によって使用できなくなることにより、トイレの不衛生や不便さが原因でストレスが蓄積したり、飲料水を我慢したことによる、「エコノミークラス症候群」の発症で健康被害が出るなど、深刻な問題を引き起こします。
震災時のトイレ機能を確保するには、地域防災拠点から水再生センターなどまでの下水道の機能を確保することが必要です。家庭や職場では、仮設トイレや簡易トイレの備蓄が重要となります。
1、通信
1:固定電話
①災害時における通信設備の物理的な被害と被害軽減に向けた対策
通信設備はこれまでの災害経験をもとに耐災性を高めています。電気通信事業者の通信ビルは震度7クラスの地震にも耐えうる構造になっていたり、通信ケーブル断等ですぐに通信サービスが途絶しないように中継伝送路の冗長化が図られています。また、通信ビルの停電を想定し、非常用発電装置やバッテリーを備えています。
- 通信量増大による通信サービスへの影響
災害が発生すると、被災地に対する安否確認や見舞い等の電話が短時間に急増することにより電話がつながりにくい「輻輳(ふくそう)」という状態になります。阪神淡路大震災の際には、固定電話は通常の50倍、東日本大震災の際には、通常の9倍の電話が被災地に集中しました(携帯電話は50倍から60倍以上と推定されています)。
通信ネットワークが集中すると、警察・消防などへの緊急連絡や、防災機関などの災害時優先電話などの重要通信もつながりにくくなります。
このような輻輳状態を緩和させるために通信事業者は、一般の利用者間の電話を規制します。尚、緊急通信や避難所などの臨時の特設公衆電話や、街頭に常設されている公衆電話は、規制の対象外となっています。
2:携帯電話・スマートフォン
①通信設備とサービスの影響と対策
携帯電話は、携帯端末との電波を送受信する多数の基地局が設置されていて、国の基準を上回る耐震、耐風対策が施されています。また、交換設備などが設置されている通信ビルには、固定電話同様、耐震・耐火・水防対策がされています。万が一、基地局設備が被災した場合に備えて移動基地局車や、移動電源車を保有しており、必要に応じて出動させています。
②緊急地震速報、津波警報、特別警報等通知
(1)急地震速報、津波警報、特別警報等通知の概要
気象庁から発出される「緊急地震速報」、「津波警報」、などを携帯電話の
セルブロードキャストシステム機能を利用し、メールの形で携帯端末へ
一斉配信されるものです。
(2)災害・避難情報通知(エリアメール等)の概要
自治体が発出する避難情報などを、上記の同様の機能を利用し、必要なエリアに一斉送信するものです。
3:災害時における利用者としての備え
(1)災害が発生していない通常時
従来、固定電話は通信ビルからの給電により利用可能であったが、通信端末がFAX機能など機能が多様化しており、電力を必要なものが多くなっていますので注意が必要です。また、最近は光回線を使った電話を利用している場合、電話機だけでなく、回線終端装置などの通信機器への停電対策が必要になります。
(2)電話の利用にあたって
①固定電話の場合、受話器が外れていると、かかってきた電話も「話し中」となって再呼を生み、輻輳を助長してしまうので、受話器が外れていたら戻すようにしましょう。
②被災地内の自身の安否連絡は、輻輳の影響のない公衆電話を利用しましょう。
③被災地への電話は控えめにしましょう。もし電話がつながっても手短にすませてください。
4:電気通信事業者が提供する安否確認システムの利用
①災害用伝言ダイヤル(171)
固定電話のサービスをメインに開発され、1998年から提供されています。
被災者が自身の安否を音声で録音し、親族や知人に知らせるものです。録音装置は全国に分散設置されており、被災地への電話の集中を緩和することが出来るので、積極的に利用しましょう。東日本大震災では、348万回の利用がありました。
②災害用伝言板(web171)
インターネットを活用し、被災者がテキストで安否情報を登録することで、その情報を親族・知人が検索し安否を確認するシステムです。
2005年より提供されていて、特徴的な機能は以下の通りです。
(1)携帯電話各社の災害用伝言板との連携(相互検索・参照が可能)
(2)伝言の通知(事前に設定しておいた相手にメールや音声で通知が可能)
(3)伝言板ホームページの多言語対応(日本語・英語・中国語・韓国語)
普段から災害に備えた安否確認方法のルールづくりを家族や知人と確認しておきましょう。
上記の安否確認システムは、災害時はもちろん、毎月1日・15日や防災週間(8月30日~9月5日)、正月三が日、防災とボランティア週間(1月15日~21日)には体験利用をすることができます。
次回は、交通インフラの確保について解説していきます。
鉄道やバスなどの公共交通機関の災害対策や対応、道路の交通規制・帰宅困難者対策等について解説します。
今後も災害時に役立つ情報をお伝えしていきますので、是非ご覧ください。