Home 家づくりのまなびば防災 14:災害医療とこころのケア

14:災害医療とこころのケア

災害が発生すると、多数の疾病者が発生し、その対応に医療関係は対応に迫られることになります。

どのような災害が発生したかによりますが災害発生時に多数の疾病者が発生する事だけでなく、被災後の避難生活による疾病、被災体験による心の病、また救助者や援助者がその活動によっておこる様々な疾病など災害医療は多岐にわたり多面的な要素が時間の経過と共に変わっていきます。今回は、そのような災害医療について学んで行きましょう。

 

いかにして、救う事の出来る命を救うか

災害医療の最優先課題は「いかにして、救う事の出来る命を救うか」であります。

災害時の医療活動として、阪神淡路大震災において初日は圧倒的に外傷が多く、2日目には外傷と疾病が半々、5日目以降はほとんどが疾病患者となります。避難生活が長引くと伝染病や食中毒に注意を払う必要も生じます。避難生活中に体調を崩して死亡する関連死では新たに発病した疾患より持病の悪化や常備薬の不足による発症が多くみ受けられます。また、乗用車の車内など狭い場所で長時間同じ姿勢を続けていると、エコノミークラス症候群を発症する危険が有ります。

 


 

災害医療の特徴は「限られた人的・物的医療資源で膨大な負傷者に対応しなければならない」事です。

そのため、災害現場では3つのTと言われる「トリアージ(選別)」「トリートメント(治療)」「トランスポーテーション(搬送)」が重要になります。

 

・トリアージとは

フランス語のtrier(選り分ける)が言語で「負傷度による負傷者の選別」で「救う事の出来る命を救う」目的のためには必要な事で、トリアージタグという医療の優先順に赤:第一順位・緊急 生命、四肢の危機的状況でただちに処置の必要な物

黄:第二順位・非緊急 2~3時間処置を遅らせても悪化しない程度のもの

緑:第三順位・軽処置 軽度外傷、通院加療が可能な程度のもの

黒:第四順位・死亡、不処置 生命徴候の無いもの

の4色が定められています。

負傷者の治療優先度を決定する事は容易なことではない、日頃からトリアージについての一般の理解を得るための広報活動が重要となります。

 

・トーリートメントとは

「負傷者の治療」で一例としてクラッシュシンドローム(挫滅症候群)は四肢が長時間挟まれると直接筋肉が圧迫され損傷する事だけでなく、筋肉は4~6時間で不可逆性の壊死に陥り筋肉から大量のカリウムが出される、この状態で圧迫が解除されるとカリウムを大量に含んだ血液が全身を巡り、最も重症の場合は、心臓の拍動が止まってしまいます。圧迫を解く前に止血などを行ってから圧迫を解く必要があります。

 

・トランスポーテーションとは

「負傷者の搬送」で医療機関の被災状況や負傷者の受け入れ状況について、行政や医療機関が最新の情報を保有し、的確な搬送を行う事が求められる。搬送手段は陸路だけでなく、空路、海路などあらゆる手段をはじめから検討しておくべきである。

 

防災士教本より引用

 

 

さらに、上記の「3つのT」を有効に機能させるには、CSCAの確立が必要となります。

C:command&control(指揮命令(系統)と統制(連携))

S:safety(安全)

C:communication(情報収集と伝達)

A:assessment(評価)であります。

災害現場では、急遽組織された医療チームは特に情報の伝達や収集が円滑ではないので、それをサポートすることが大事です。

災害現場での安全とは医療チームの安全だけでなく、現場及び周囲の安全、負傷者の安全、二次災害の予防や感染症対策も含まれます。

伝達手段は、電話、無線、IT(メール等)、伝令などデジタル・アナログを現場の状況に合わせて適宜に活用することが望ましいです。評価は、次に計画を立案し実行することを念頭に置いて行うべきで、その評価は時間の経過や組織の階層ごとに繰り返す必要があります。

 

心的外傷について

人は悲惨な災害や事故、傷害犯罪、戦争などを体験することをトラウマ(心的外傷)と言います。その様な危うく死にそうになったトラウマがその後も意に反して繰り返し想起されること、トラウマと関連することを回避しようとすること(回避・麻痺)、睡眠障害やイライラといった特徴を持つPTSD(心的外傷後ストレス障害)を発症する場合があります。

治療としては、本人に現実に何が起きたかをもう一度客観的に捉えさせ、生きる希望を持たせることが重要となります。が、本人は想像以上に傷つきやすい状況にあることを心得、辛抱強く「待ちの時間」を持つことで、感情を癒していくことが大切となります。

 

災害のストレスを受けるのは被災者だけでなく、救急隊員、日本赤十字社職員、警察官など職業的救援者も、遺体や悲惨な光景を目撃したり、トリアージなどの重大な判断に際しストレスを受けます。それゆえ、職業的救援者は「隠れた被災者」と呼ばれ下記の3つのストレスを受けます。

・危機的ストレス
生命の危険を伴う重大な出来事からのストレス。同僚の死、死体や悲惨な状況の目撃、責任の重い決断、任務の失敗など。

・累積的ストレス
不快で危険な環境での長時間の救援活動や救護活動委の困難さ、プレッシャーなどからのストレスの蓄積。

・基礎的ストレス
救護活動という特殊な状況下で共同生活をする中で、内部の人間関係などからのストレス。

職業的救援者の精神面については個人の資質の問題とされてきたが、人が活動するには心身両面の健康が必要で、そのためには組織としての精神的な支援態勢が必要となります。

限られた精神保健資源幅広い住民の「こころのケア」のニーズにこたえるために下記のような支援体制が提唱されています。

 

防災士教本より引用

 

 

第Ⅰ層は、基本的な生活(食料、避難所、ライフライン)や身体健康(保健医療、感染症対策など)のニーズを満たすこと。

第Ⅱ層は、家族関係や地域社会の安定を通じて、自助・共助を促進すること。

第Ⅲ層は、精神保健以外の医療サービスの中で精神面に配慮した心理的な応急対応。

第Ⅳ層は、精神保健の専門家による治療であります。

 

そして、

《自分のストレスを和らげる方法》として、

・不安や恐怖を抑えず、誰かに話す。

・自分だけで解決しようと無理をしない。

《相手のストレス状態を把握するためのサポート》として、

・話を聞いてあげる(無理に聞き出すのではなく、話し相手になる)

・批判すること、安易に励ますこと、「こうすれば、ああすれば」と助言することは控える。

ことを心掛けましょう。

 

 

普段からの積極的な行動と知識のバージョンアップを

災害時の医療体制は限られた設備などのインフラと医療従事者の確保が重要です。時間の経過に伴うニーズの変化など情報の共有も重要なこととなります。我々も過去の震災の経験をもとに積極的な活動への参加など普段からの積極的な行動と知識のバージョンアップが大切になっていきます。

周りの人達みんな、被災者なのですから・・・

 

次回のテーマは、「ライフラインの確保(電力・ガス)」です。

電力・ガスのライフラインの災害に対する対策と復旧に関し学んでいきましょう。

 

 

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