近年の住宅には、軒の出が殆どなかったり、庇(霧除け)がない住宅が多く見受けられるようになりました。30年ほど前の家はほとんど設置されていました。軒や庇にはどのような役割があったのでしょう?
今回は、軒と庇について解説してみたいと思います。
軒とは
軒とは、屋根の先端が外壁ラインから出ている部分を言います。
子供のころ、軒下で雨宿りなんてしたのを思い出します。
軒の出が、45cm出ていれば、無風の雨の日でしたら軒から7mの下までの外壁は濡れなくなるほどの効果があり、外壁の劣化や雨漏りの防止になります。
庇(霧除け)とは
庇(霧除け)とは、窓の上に設置する小さな屋根の事をいいます。
窓の高さと庇の出が2:1が基本とされていて、夏は太陽の日差しを防ぎ、逆に冬は部屋の中に暖かい日差しを取り入れる事が出来る効果があり、省エネに貢献します。また、窓などの建具(昔は木製の窓が一般的)に、直接雨が当たらなくなるので、雨漏りのなどの水の侵入を防ぐ効果もあります。
先日、外壁を30年近くメンテナンスされていない建物を調査した所、軒が90cmも出ていて、そのおかげで外壁が殆ど劣化していませんでした。
昔の家づくりは、自然環境とうまく共存しながら生活ができるよう、上手に考えながら造られていたんですね。
最近の家づくりにおいて、軒や庇が見受けられなくなった原因はいくつかあります。
- アルミサッシの普及により、窓の雨漏りに対する性能が上がった事。
- 狭い敷地の中に、建築基準法の道路斜線・北側斜線・隣地斜線などの規制をクリアして建てなければならない事。
- 防水材料や工法の技術が向上した事。
などが挙げられると思います。
住宅の性能がこれからますます高性能化していく中で、上記のような先人の知恵や技術を十分に利用・継承して、今後の家づくりに活かすことをしたいと思っております。