「四号特例」って何?
家を設計するとき、建築基準法では、建物に作用する力(垂直荷重、水平荷重)に対して、安全であること、快適であることが求められます。また地震時の基準は、震度5程度で、建物に著しい損傷をしない事、また震度6強~7では倒壊しない事が最低求められます。
これらを確認する作業がいわゆる「構造計算」になります。
しかし今建築されている多くの木造住宅は「構造計算」がされていません。
それはなぜか?
建築基準法で定められる「構造計算」は許容応力度計算などが該当しますが、この計算は、木造の場合3階建て又は延床面積500㎡以上の建物に義務付けられていますが、木造2階建て以下で延床面積500㎡以下の建物(これに該当する建物を四号建物という)には義務付けがなく、いくつかの仕様規定(ルール)に適合し、かつ壁量計算・四分割計算・柱のN値計算 この3つの簡易計算に適合しているかのチェックのみで建築可能です。
また、地震力・風圧力の水平荷重に抵抗する最も重要な耐力壁の量は壁量計算で計算しますが、この計算では、建物を重い屋根と軽い屋根に分け、それぞれの床面積に一定の係数をかけ必要壁量を算出しますが、仕様は屋根のみで、その他の仕様は考慮されません(屋根・壁の種類や軒の大きさ等)。
また建物形状も四角の総2階建てを想定していますので、L字形・コの字形、オーバーハング、吹抜なども考慮されません。さらに耐力壁以外の雑壁(窓の上下の壁や筋交などの入っていない壁)が、水平荷重の3割程度を負担していると考え、その分を差し引いています(最近の住宅は、部屋を大きくとり、廊下などを減らしているため雑壁が少ない傾向にあります)。
(※建物に作用する垂直荷重に対しては、仕様規定に適合しているかのチェックのみで、計算は義務化されていません。)
さらに、四号建物は、建築士が設計した場合、確認申請時に構造の審査が省略され、構造計算書はもちろん壁量計算書や伏図などの構造関係の資料の提出も求められません。
これを建築基準法で「四号特例」と規定されています。この規定は「計算省略」の規定ではありません。しかし残念ながら計算をしなかったり、間違った解釈により耐震性能が不足した建物か設計され、建築され続けています。このことは熊本地震でも問題となりました。
- 被災者を苦しめる「四号特例」記事
https://xtech.nikkei.com/kn/atcl/knpcolumn/14/505663/053100012/
今年になり、ようやく四号特例の見直しが議論され、4月に国会に「四号特例縮小法案」が提出され交付されました。今後木造の場合2階建て以上及び平屋建て200㎡以上は建築確認申請時に構造の審査が必要になるため、壁量計算書や伏図などの構造関係の図面提出が必須となります。2025年度中に施行される予定です。
四号特例が大幅に縮小され、耐震性能不足の問題も解決されていくと思いますが、信頼できる建築士や工務店に相談し、ご自身で耐震性能の数値を必ず確認することをお勧めします。
- 壁量計算の例
出典:ヤマベの木構造
軽い屋根 2階建て 延床面積:120㎡(1階床面積:70㎡ 2階床面積:50㎡)の場合
2階必要壁量→50×15=750㎝ (2倍筋交入りの91㎝の壁 5ヶ所以上 X,Y方向共)
1階必要壁量→70×29=2030㎝ (2倍筋交入りの91㎝の壁 12ヶ所以上 X,Y方向共)
※2倍筋交:4.5㎝×9㎝の木材を柱間に斜めに設けたもの
簡単な計算です。